「お仕事は何をされていますか?」という質問を私はよくする。
コミュニケーションをスムーズにし、相手をよく知ることの一つの方法と思っているからである。
日本ではこの質問に対してはよく「サラリーマンです」「公務員です」という抽象的な答えが返ってくるが、タイでは具体的な自分の仕事について質問以上に答えてくれ、タイならではの面白い職業ネタを聞くことも多い。
一人の職人との出会い
「お仕事は何をされていますか?」
「縫子だよ」彼女は答えた。
「何を縫っているのですか?」と続けて尋ねた。
なぜなら、私のタイの友人には縫子さんが何人かおり、ある人はビジネススーツを、ある人はカバンを、ある人は車のシートを縫っている。何の裁縫をしているのかと思ったからだ。
「洋服だよ」
タイでは、この種類の個人事業主が大変多い。ミシン一台あればなんでも縫えるという感じだろうか?街の至る所からミシンの音が聞こえてくる地区もある。
私はふと、裾直しをしたいスーツのパンツがあったことを思い出し、後日彼女のところに持っていった。スーツのパンツをダブル2cmほどにしてもらう仕事であったが・・・
カタカタカタ・・・と数分ほどで終了。
「お値段は?」と尋ねると
「20バーツ」という返事が返ってきた。
は? 20バーツ(約60円)ー 安すぎないか?
日本では、約1000円ほどかかるのが20バーツ?(約65円)
それは申し訳ないからと50バーツ紙幣を渡したが、
「いらないよ。だって、そんなの5分くらいの仕事だからね」
としっかり30バーツのお釣りを返された。
ー 裾直し20バーツ ー であればどんな仕上がりでも仕方ないかと思いつつ、帰宅してから見てみた。ところが結構いけるではないか。しっかりと綺麗にダブルの裾上げがされている・・・。
アジアでは縫子さんたちの社会的立場や給与は決して高くない
しばらく時間が経ち、もう一度その女性に会う機会があったので、先回のお礼を述べもう一つ質問をしてみた。
「日給はおいくらですか?」
「250バーツ」(約800円)と答えた。
聞けば、会社の持ってくる学校のユニフォームなどの制作を1日8−10時間ほどしているとのこと。すでに当時タイの最低賃金は300バーツ/日ではあるから最低賃金にも満たさない。日本で言うブラック企業なのか?何れにしても確かに、5分の仕事を20バーツだとかなり割りの良いお仕事になるわけだ・・・。
そして、重ねて質問を続けた。
「その仕事に満足していますか?」
彼女は答えた。
「作ることが好きなんだよ。受け取ってくれる人が喜んでくれたら良いじゃない」
あ、この人は自分の仕事に誇りを持っているんだ。
それから徐々に様々な服のオーダーを注文。日本の服を持っていけば、同じ形に仕上げ、微調整もできる。かなり裁縫レベルも高い。少しずつ、日本の友人からも観光の時には気に入った生地でオーダーしたいと注文がくるようになった。
しかし細かな裁縫の面では、世界で一番、目が肥えているのではないかという日本人を満足させるにはその技術を教える必要があると感じられた。(日本の裁縫が長けているのではなく、国による裁縫の違いということだけで、より日本人の好む裁縫方法に近づけるという意味である。)
しかし、彼女には謙虚さと向上心があり、その裁縫方法を知りたいと言ってくれた。
あなたの技術は確かである。あなたの仕事にはもっと価値があることを知ってほしいと思い教えることにした。
数年たった今、現在彼女は弊社のOEM業務の重要な一員として現役で業務を果たしてくれている。なお、現在彼女のこのプロジェクトから得られている労働賃金は当時の3〜4倍である。
これが弊社のワンチームプロジェクトの原点であり、技術のあるタイの人材がこのプロジェクトから相互に益を生み出すプロジェクトにしたいとの願いが込められている。
あなたの技術を弊社のワンチームプロジェクトで生かしませんか?
様々な分野で技術は高いが生かしきれていない人材がタイには沢山います。その個人や企業を多く発掘して、日本のクリエターやデザイナーとマッチングさせていきます。ご興味ある方はどうぞお問い合わせ欄からご連絡ください。
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